売掛金回収について

売掛金回収の準備

売掛金回収の準備

相手に財産がありますか?
どのような原因から発生した債権であっても、又その債権について判決を得たとしても、相手に財産が無ければ回収できません。 先ず相手の財産を調べましょう。

財産は不動産や預金だけでなく、いろいろな種類があります。
本人に財産が無い場合は、本人以外に責任を負う者がいないか調べましょう。 例えば会社が債務者で無財産であっても会社法の定めや法人格否認の法理で取締役に責任を負わせることができる場合があります。 本人の雇い主、自動車事故であれば自動車の保有者、家事債務であれば本人の配偶者など、いろいろ考えられます。

そして財産があることが判ったら、確実に回収できる方法を考えましょう。
その財産が動産や不動産であれば、質権・抵当権、譲渡担保権の設定など・・・、貸金、売掛金、工事代金、預金などの債権や株式などの債権であるときは、代理受領、債権譲渡、債権質権の設定、などです。 仮差押など裁判上の手続が必要な場合もあります。


 

売掛金回収のQ&A

①第三者からの回収
q 当社は米穀飼料の販売をしており、牧畜業者Aに牛の飼料を継続的に売り渡していました。 Aは育てた牛を畜産業者Bに売っていました。 1年くらい前からAは代金の支払が遅れがちで、請求するとBから牛の代金が入るまで待ってくれと言っています。飼料を売らないと牛が死んでしまうので取引を続けていますが、Aから代金を払って貰えるか心配です。
a AからBに対する牛の売渡代金債権の譲渡を受け、あなたが直接Bに請求してください。 Aが債権譲渡を承諾しなければ、あなたが債権者代位権に基づいて直接Bに代位訴訟を起こすことができます。
②資産が無い会社の代表取締役からの回収
q 当社は水道工事業をしています。 建築会社Cから建売住宅の水道工事を頼まれて工事を終えました。 代金を請求するとCから会社の負債が3億円あり債務超過で支払の見込みはないと言われました。 しかしCの社長のDは立派な自宅に住んで高級車を乗り回しています。 こんなことが許されるのでしょうか。
a あなたに工事を発注したとき、すでにCは工事代金の弁済ができない状態でした。 したがって代表取締役Dには会社法に定める取締役の第三者に対する責任があるので、Dに損害賠償を請求できます。
③出資契約を取り消して貸金を回収
q 私は、友人のEから「新規事業を始めるについて事業資金を貸してくれ、利息のほかに相当な礼をする」と頼まれ、1000万円を期間1年、利息15%で貸しました。 Eは期限が来ても返さないので請求したところ、友達数人と共同出資で株式会社Xを設立し、借りた金はその出資金に当てたと言いました。 Eには私のほかにも債権者がいて、土地建物がありますがオーバーローンです。 ほかに財産はありません。
a 詐害行為取消権によりEの出資を取り消し、XからEが出資した金額を取り戻すことができます。
④工事の元請負人からの回収
q 私は土木工事の仕事をしています。 東証一部上場のY組は、国から河川の築堤工事を受注し、その工事を小規模のA土木ほか数十社に下請けさせました。 私はA土木から土砂運搬と整地などを請負いました。 代金は毎月出来高に応じてA土木から支払われていました。 ところが突然A土木が倒産し前月分の支払がありませんでした。 それで私は仕事を止めました。 すると元請のY組の工事現場事務所の所長のZが来て、私に作業を続けるように指示しました。 私はA土木が倒産して代金を払ってくれないから仕事はできないと言いました。 すると所長のZは未払い分も今後の作業分もY組が払うから作業を続けてくれと言いました。 それで私は請負った工事を完成させました。 その後、国の検査がありましたが、私が担当した部分については何のクレームもありませんでした。 それで私はY組に代金を請求しました。 するとY組は、既に全額をA土木に支払い済みだから二重払いはできないと言って支払ってくれません。
a 工事現場事務所長のZは、その工事に関してはY組を代理する表見支配人に当ります。 したがって、あなたとY組との間には工事請負契約が成立したことになります。 Y組には支払義務があります。(この件については、後日Y組の顧問弁護士と交渉し、相手が表見支配人の責任を認め、全額を支払ってくれました)
⑤共有物分割判決による回収
q 私は、写真機材の販売をしています。 Aは写真屋をしていて、長い取引関係でした。 不況でAの支払が滞り売掛が500万円位になりました。 Aには、親から相続したABCの各持分3分の1の共有の土地があるだけで、他には金目の物はありませんでした。 それで私は売掛金の担保の意味で、形式は代物弁済として、その土地のA持分を貰い、登記も終わりました。 後でAが代金を払ってくれたら土地を返すつもりでいました。 ところが暫くしてAが死亡しました。 私は土地の持分では利用価値が無いのでBとCに私の持分を買ってくれるように頼みました。 しかし両人とも金がないということで断られました。 不動産屋に相談しましたが、持分だけ買う人はいないと言われました。
a 共有物分割の訴訟で解決します。 具体的には、その土地を競売して売却代金を持分割合で分けるという内容の競売判決を求めます。 この判決により土地全部を競売して、競売費用を差し引いた金額の3分の1を受け取ります。 不足分があっても取れないと思います。
⑥工事未完成を主張する注文主からの回収
q 私は、建築請負をしています。 Eから居宅の新築工事を頼まれ工事を完成させました。 ところがEは外壁の色が気に入らないと言って代金を払ってくれません。 私は色見本を見せてEが指定した色で塗装したのですが、Eが違うと言うので、仕方なく塗り直すとEに伝えました。 ところがEはお前にはもう頼まないと言ってF塗装に頼んで勝手に塗りなおしてしまい、私には代金を支払ってくれません。
a 貴方が塗り替え工事をすると言ったのに、Eがこれを拒否したのですから、貴方は塗り替え工事をする義務を免れ、請負代金全額の請求ができます。
⑦他社の法人格を乱用して債務を逃れる貸金業者からの回収
q 当社は、自動車タイヤの販売をしています。 トラック運送事業をしているF通運とは10年以上前から取引がありました。 最近タイヤ代金の支払いが遅れて売掛が500万円位になりました。 社長のCとは昔からの知り合いなので請求に行きました。 するとCは居なくて、事務室に知らない男が二人いました。 事情を聞くと、その二人は東京のD金融の従業員で、D金融がF通運に金を貸したが払わないので、払いが終えるまでD金融がF通運の資産を管理している。 運送の仕事のことや、タイヤ代金のことはF通運の社長のCに話してくれとのことでした。 登記簿上では、社長のCは今でもF通運の代表取締役になっていますが、所在不明です。
a 法人格の乱用です。 D金融はF通運のトラック運送事業免許を利用して運送事業を行っているのですから、法人格否認の法理によりF通運を支配下に置いた日以後のタイヤ代金は直接D金融に請求できます。
⑧連帯保証人は保証債務を履行前に本人へ請求できる
q 私は、X商業協同組合の理事長をしています。 取引銀行は地元のD銀行です。 組合員の出資金は一人200万円です。 組合はD銀行との間で、組合員がD銀行から借り入れをする際に連帯保証する旨の銀行取引約定をしています。 Yから組合に入りたいという相談があり、理事会で審議した結果、Yが地元の人でD銀行にも信用があったので組合に入れることにしました。 Yはブティックの店を経営していて、店舗改装のためD銀行から1000万円を借り、組合がその連帯保証をしました。 しかしYの店は、その後も売り上げが伸びず、弁済期が来ても借入金の支払ができなくてYは夜逃げをしました。 それで組合がD銀行から請求を受ける破目になりました。 組合の預金は2000万円位で、その中から1000万円をD銀行に支払うと組合の運営が難しくなるので困っています。 Yの店舗を売れば800万円くらいにはなるのですが、Yの居所が分からないのでどうにもなりません。
a 事前求償をします。弁済期が来ているので、組合はD銀行に保証債務の支払をする前に、Yに対し求償金を請求できます。 組合が原告になりYを被告としてD銀行から請求を受けている金額を支払えという訴えを提起します。 Yが行方不明であっても、公示送達という手続きで判決を得ることができます。 この勝訴判決によりYの店舗を競売し、その代金でD銀行へ支払いをします。 ただし不足分は組合が負担しなければなりません。


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